ランチェスターの法則

経営学への応用

日本におけるランチェスターの法則は経済的な関心から知られており、1955年に『オペレーションズ・リサーチの方法』が翻訳出版されてから、ランチェスターの理論を競合する大企業に対して中小企業がとるべき経営戦略、営業戦略に応用したものをランチェスター経営などと呼ばれるようになる。

ランチェスターの法則の式を見ると、もし初期の兵員数を変えることができないとしたら、勝つためにはEを増やす、つまり性能のよい武器を使うことが重要であることがわかる。しかし、それ以上に大切なのが、第1法則と第2法則のどちらを使って戦闘を行うか、ということである。
強者戦略

第1法則と第2法則を比較すると、A軍の損害は、第2法則を適用したときのほうが少ない。よって、強者であるA軍は、できるだけ軍力を残すように第2法則を適用できる戦場で戦うべきである。

マーケティング戦略
    マーケティング戦略においては、様々な分野に手を伸ばすことで、間隙を突いてのし上がろうとする他社の行動を防ぐことができる。
    一般化して述べれば、強者のとるべき戦略は追随戦略で、敵と同じ性能の武器を持ち、広い戦場で、多対一で戦い、遠隔戦を行い、力を総動員して圧倒することである。

弱者戦略

第1法則と第2法則を比較すると、A軍の損害は、第1法則を適用したときのほうが多い。よって、弱者であるB軍は、できるだけA軍を倒せるように第1法則を適用できる戦場で戦うべきである。

すなわち、実際の戦闘で言うならば、狭い谷間のような場所に軍を進め、たとえ銃や大砲を使用しても一人で多数を攻撃不可能な状況にして、接近戦・一対一の戦闘にもっていけば、A軍の損害を増やすことができる。もちろん第1法則においても、多数であるほうが優勢であるのは間違いないので、敵を分散させて各個撃破していく事も大切である。

マーケティング戦略
    マーケティング戦略においては、一つの特殊な分野に特化することで、そこまで手を回す余裕のない大企業の隙(ニッチ市場)を突いてのし上がれる。一般化して述べれば、弱者のとるべき戦略は差別化戦略で、敵より性能のよい武器を持ち、狭い戦場で、一対一で戦い、接近戦を行い、力を一点に集中させることである。
    ただし、「武器性能の向上」「各個撃破」は、マーケティング戦略では「ひとつの分野に集中する」事に相当するが、「第1法則を適用できる戦場で戦う」という事がマーケティング戦略において具体的に何を指すのかは、難しい所であろう。軍事理論をマーケティングにそのままあてはめるのは、なかなか困難な事である。


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